代襲相続と数次相続は
どのように違うのか
はじめに
代襲相続、数次相続については以前の記事で解説しましたので、今回はその違いについて詳しく解説します!
代襲相続と数次相続は、相続に関する異なる概念ですが、相続の場面では両者が交わることもあります。特に兄弟姉妹の代襲相続に関する点も重要ですので、その点も含めて、両者の違いについて詳細に説明します。
1. 代襲相続(だいしゅうそうぞく)
定義
代襲相続とは、相続人が死亡している場合、その相続人の子(または孫など)が代わりに相続をするという制度です。被相続人の子や兄弟姉妹である相続人が死亡している場合、その子供が相続人となります。配偶者と直系尊属の相続人は、代襲相続は発生しません。
適用条件
- 代襲相続は、直系卑属(子、孫など)と兄弟姉妹に対して認められます。すなわち、被相続人の子供や兄弟が亡くなっている場合、その子(孫、姪、甥など)が代わりに相続を受けることができます。
- ただし、兄弟姉妹にも代襲相続は認められますが、これは一代限りの適用です。兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その子(甥や姪)が代襲相続を受けることができますが、その後の代襲は認められません。
兄弟姉妹の代襲相続
- 兄弟姉妹が死亡している場合、その子(甥や姪)が代襲相続することが認められますが、この代襲相続は一回限りです。
- たとえば、Aさんが亡くなり、Aさんに兄弟Bさんと姉Cさんがいる場合、Bさんが亡くなっていればBさんの子(Dさん)がAさんの遺産を相続します。同様にCさんが亡くなっていれば、Cさんの子(Eさん)が相続することになります。しかし、もしDさんが死亡したとしても、Dさんの子がAさんの遺産を相続することはありません。これが「一代限りの代襲相続」です。
法的根拠
代襲相続は、民法第887条および第889条に規定されています。直系卑属に対して代襲相続が認められるのは民法第887条、兄弟姉妹に対する代襲相続が認められるのは民法第889条です。
2. 数次相続(すうじそうぞく)
定義
数次相続は、複数回にわたる相続が行われることを指します。1回目の相続が発生した後、相続人が死亡し、その次の相続が発生するというように、相続が順を追って何度も行われることを言います。
適用条件
- 数次相続は、相続が時間を経て連続して発生するケースを指します。最初に相続が発生し、相続人が死亡した後に、再度その相続人の子が相続を受けるような場合です。
- 数次相続においては、代襲相続も適用されることがありますが、数次相続は単に相続が複数回続くということに焦点を当てています。
具体例
例えば、Aさんが亡くなり、Aさんの子Bさんが相続を受けたとします。その後、Aさんの相続手続きが完了しないままBさんが死亡し、Bさんの子CさんがAさんの数次相続人となります。さらにCさんがAさんの相続手続きが完了しないまま亡くなり、Cさんの子Dさんが再びAさんの数次相続人となる、というように、相続が連続していく場合です。このように、数次相続は、相続が発生した後、時間を経て複数回続く状況を指します。
法的根拠
数次相続には特定の法的根拠はなく、通常の相続手続きが段階的に行われる中で発生するものです。ただし、相続分や相続人の確定は民法に基づいて行われます。
3. 代襲相続と数次相続の違い
項目 | 代襲相続 | 数次相続 |
---|---|---|
定義 | 相続人が死亡している場合、その子や孫が代わりに相続すること | 相続手続きが完了しないまま複数回にわたる相続が発生すること |
適用条件 | 相続人が死亡した場合、その相続人の子(または孫)が代わりに相続する | 相続が一度発生した後、その相続人が死亡し再度相続が行われる場合 |
相続の繰り返し | 代襲相続は通常一回限り。兄弟姉妹に関しては代襲が一代限り適用される。 | 相続が時間を経て繰り返し発生する |
相続人の範囲 | 直系卑属(子、孫など)や兄弟姉妹の子(甥・姪) | 初回の相続人からその後の相続人まで |
代襲相続の範囲 | 直系卑属と一代限りの兄弟姉妹の代襲 | 数次相続の中で代襲相続が適用されることもある |
法的根拠 | 民法第887条(直系卑属)、民法第889条(兄弟姉妹) | 特定の法的根拠はなく、通常の相続手続きが順次行われる |
4. まとめ
- 代襲相続は、相続人が死亡している場合、その相続人の子(直系卑属や兄弟姉妹の子)が代わりに相続をする制度です。兄弟姉妹に関しても代襲相続は認められますが、一代限りです。
- 数次相続は、相続が複数回にわたって連続して発生することを指し、代襲相続も適用される場合がありますが、基本的には相続が段階的に繰り返されることに焦点を当てた概念です。
代襲相続は「相続人が死亡していた場合にその代わりとして代襲相続人が相続する」制度であり、数次相続は「相続が時間を経て複数回続く」状況を指します。特に兄弟姉妹の代襲相続に関しては、一代限りという重要な点がありますので、この点を理解することが重要です。