法務局で相続登記の戸籍が足りないと言われるのはなぜ?具体例を解説

相続登記のために戸籍を集めて法務局へ出したのに、「この戸籍では足りません」「追加で戸籍が必要です」と言われて止まることがあります。ここで戸惑う方はかなり多いです。

被相続人の戸籍は集めた。古い戸籍も出した。それなのに、なぜまだ足りないのか分からない。こうした場面で起きているのは、単純な通数不足ではありません。

法務局が見ているのは、

・被相続人の戸籍が出生から死亡までつながっているか
・相続人が誰かを登記の前提として確定できるか
・代襲相続や数次相続が起きていないか
・遺産分割の前提になる相続関係が本当に固まっているか

という点です。

つまり、法務局で戸籍が足りないと言われるのは、「戸籍の枚数が少ない」からではなく、「登記の前提確認がまだ終わっていない」からです。

この記事では、法務局で戸籍が足りないと言われたときに多い典型例を、相続登記の流れに沿って解説します。

相続の戸籍収集にお困りの方へ

相続では、まず被相続人の戸籍を「出生から死亡まで」揃える必要があります。
ただ本当に迷いやすいのは、相続人側の戸籍を「誰の・どこまで」用意すべき範囲が分からないことです。

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目次

先に結論 法務局で戸籍が足りないと言われるのは、相続登記の前提確認が足りないから

先に結論を言うと、法務局で戸籍が足りないと言われる理由は、戸籍の枚数そのものではありません。

法務局が困るのは、

・被相続人の戸籍が出生から死亡までつながっていない
・相続人が誰か確定できない
・代襲相続や数次相続の確認が終わっていない
・提出された戸籍だけでは登記原因を支える相続関係が固まらない

という状態です。

相続登記では、不動産を誰に移すのかを公的に記録します。その前提になる相続関係が曖昧なままでは、法務局は登記を進められません。つまり法務局が求めているのは「たくさんの戸籍」ではなく、「相続登記の前提を確認できる戸籍」です。

法務局は戸籍で何を確認しているのか

法務局が戸籍で確認したいのは、主に次の点です。

・被相続人が亡くなった事実
・被相続人の戸籍が出生から死亡までつながっていること
・法定相続人が誰か
・相続人の中に先に亡くなっている人がいないか
・代襲相続や数次相続が起きていないか
・遺産分割協議に参加すべき人が漏れていないか

ここで大事なのは、法務局は単に死亡確認のために戸籍を見ているわけではないということです。相続登記では、「この不動産をこの相続人に移す法的前提が本当にあるか」を確認しないといけません。そのため、法務局は、「誰が相続人か」「この戸籍で本当にそこまで言えるか」をかなり慎重に見ます。

典型例1 被相続人の戸籍が出生から死亡までつながっていない

最も多いのがこれです。相続登記では、被相続人の現在戸籍や死亡時の戸籍だけでは足りないことが多いです。婚姻、転籍、改製などを経て、前の戸籍が別に残っていることがあるからです。

たとえば、

・死亡時の戸籍は出した
・一つ前の除籍も出した
・しかし、さらに前の改製原戸籍が残っていた

というケースです。

この場合、自分ではかなり集めたつもりでも、法務局から見ると「まだ出生までつながっていない」可能性があります。特に止まりやすいのは次の場面です。

改製原戸籍を取り切れていない

現在戸籍や除籍は取れていても、その前の改製原戸籍が残っていることがあります。ここが欠けると、被相続人の戸籍の流れが途中で切れます。

転籍前の戸籍が残っている

本籍地を移している場合、転籍前の戸籍が別の自治体に残っています。今の戸籍だけでは過去が追えないため、前の本籍地の戸籍まで必要になります。

一見つながっているように見えて、さらに前がある

何通か集まっていて「もう十分だろう」と思っても、戸籍の記載をよく見るとさらに前の本籍地や改製前戸籍が見えてくることがあります。ここを落とすと、法務局では足りないと言われやすいです。

被相続人の戸籍を出生から死亡までどう確認するかは、以下の記事も参考になります。
相続の戸籍収集はどこで完了?必要な戸籍がそろったかの見極め方

典型例2 子が先に亡くなっていて、孫の確認が足りない

被相続人に子がいたが、その子がすでに亡くなっている場合は、孫が代襲相続人になることがあります。

この場面で必要になるのは、

・子が亡くなっていることが分かる戸籍
・その子にさらに子がいるか分かる戸籍
・代襲相続人である孫の確認

です。ここが足りないと、法務局は「本当にこの孫だけが代襲相続人なのか」「他にも代襲相続人がいないのか」を判断できません。

相続登記では、遺産分割協議に入るべき人が漏れていると前提が崩れます。そのため、被相続人本人の戸籍がそろっていても、子の側の確認が不足していると止まります。

子の代襲相続で戸籍がどこまで必要になるかは、以下の記事で詳しく解説しています。
子の代襲相続の戸籍はどこまで必要?(孫・ひ孫)必要な戸籍の範囲

典型例3 兄弟姉妹相続で、父母や祖父母の確認が足りない

兄弟姉妹相続は、法務局で不足と言われやすい典型です。兄弟姉妹が相続人になるのは、「子がいない「直系尊属もいない」場合です。

そのため法務局は、

・子がいないこと
・父母がすでに亡くなっていること
・場合によっては祖父母もいないこと

まで確認したいことがあります。この確認が終わっていないと、「本当に兄弟姉妹が相続人なのか」が固まりません。つまり、兄弟姉妹本人の戸籍だけ出しても足りないことが普通にあります。

兄弟姉妹相続の確認範囲は、以下の記事も参考になります。
兄弟姉妹が相続人の戸籍はどこまで必要?甥姪(代襲)までの取得範囲

典型例4 甥姪の代襲相続が入っていて、代襲相続人の確定ができていない

兄弟姉妹相続よりさらに止まりやすいのが、甥姪の代襲相続です。たとえば、相続人になるはずの兄が先に亡くなっていて、その子である甥が相続人になるケースです。

この場合、法務局が見たいのは、

・兄が先に亡くなっていること
・その兄に子がいること
・甥姪のうち誰が相続人になるのか

です。ここで戸籍が足りないと、「甥はいるが姪もいるのでは」「他に代襲相続人がいないのか」が分かりません。つまり、兄弟姉妹相続では直系の確認で止まり、甥姪の代襲相続では枝分かれした先の確認で止まりやすいです。

典型例5 前婚の子・認知した子・養子など、見えていない相続人の確認が足りない

法務局が慎重になるのは、「今見えている家族だけが相続人とは限らない」からです。

典型例は次のようなケースです。

・前婚の子がいる
・認知した子がいる
・養子がいる

このような場合、現在の家族だけを前提に遺産分割協議や登記を進めると、相続人の見落としが起きるおそれがあります。

たとえば、

「配偶者と今の子だけの相続だと思っていた」

「実は前婚の子も相続人だった」

という流れです。この場合、法務局は登記を進められません。つまり、ここで足りないのは戸籍の枚数ではなく、「他に相続人がいないと言えるだけの確認」です。

関連記事としては次がつながります。
前妻の子は相続人になる?相続順位と戸籍確認のポイントを実務解説
認知した子は相続人になる?戸籍で確認すべきポイントを実務解説

典型例6 数次相続が重なっていて、最初の相続だけでは足りない

数次相続でも、法務局で戸籍不足になりやすいです。たとえば、被相続人が亡くなった後に、相続人の一人も亡くなっている場合です。このときは、最初の相続だけでなく、その後に発生した相続まで見ないといけません。つまり、確認対象が一気に増えます。

このタイプで止まる理由は、「被相続人の戸籍はそろっているのに、登記の前提は最初の相続だけでは終わらない」からです。法務局からすると、「最初の相続だけを前提に名義を移してよいのか」が分からない状態です。

数次相続は、以下の記事も確認しておくと分かりやすいです。
数次相続とは?代襲相続との違いと相続人・必要戸籍の考え方を解説

典型例7  附票や住所つながりなど、戸籍以外の前提で止まる

法務局で止まる理由は、狭い意味での戸籍不足だけではありません。

たとえば、

・戸籍はかなり出したが、附票など別書類も必要だった
・被相続人や相続人の住所つながりの確認が別途必要だった

という場面です。

相続登記では、不動産の名義や住所の流れの確認が問題になることがあります。このときは、「戸籍は足りている」ことと「登記に必要な書類が足りている」ことが別になります。

附票については、以下の記事で詳しく解説しています。
戸籍の附票とは?相続で必要になるケースと取得方法

法務局で足りないと言われたら、見るべきなのは「何が未確認か」

法務局で戸籍が足りないと言われたら、大事なのは「何通足りないか」ではありません。

見るべきなのは、

・被相続人の戸籍は出生から死亡まで本当につながっているか
・相続人側の確認がまだ必要ではないか
・代襲相続や数次相続が起きていないか
・前婚の子、認知した子、養子など見落としやすい相続人がいないか
・戸籍以外の前提書類も必要になっていないか

という点です。つまり、足りないのは戸籍の枚数ではなく、登記の前提確認であることがほとんどです。ここを外すと、戸籍を追加で取ってもまた止まりやすいです。

戸籍収集にお困りの方へ

相続では、
・戸籍を出生から死亡まで集める
・相続人を確定する
・法定相続情報一覧図を作成する
必要があります。

しかし実際には、
・法務局へ出したら戸籍が足りないと言われた
・被相続人の戸籍はそろえたつもりだったが、相続人側の確認が足りなかった
・兄弟姉妹相続や代襲相続で、どこまで戸籍が必要か分からない
・追加提出と言われたが、何を足せばいいのか分からない
という形で止まりやすいです。

戸籍取り寄せ代行センター(行政書士)では、
・相続に必要な戸籍収集
・法定相続情報一覧図の作成
をまとめて対応しています。

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まとめ

法務局で戸籍が足りないと言われるのは、「戸籍の通数が少ないから」ではなく、「相続登記に必要な確認がまだ終わっていないから」です。

典型例としては、

・被相続人の戸籍が出生から死亡までつながっていない
・子や甥姪の代襲相続の確認が足りない
・兄弟姉妹相続で父母や祖父母の確認が終わっていない
・前婚の子や認知した子など、見落としやすい相続人の確認が足りない
・数次相続が重なっている
・一覧図や附票など、戸籍以外の前提も含めて不足がある

といった場面があります。

法務局で止まったときに大事なのは、「何通足りないか」より、「何がまだ未確認なのか」を見ることです。

相続の戸籍まわりの全体像は
相続の戸籍の集め方と必要書類|解説記事一覧
にまとめています。他のケースや手続きも含めて確認したい方は、あわせてご覧ください。

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