相続の戸籍収集では、被相続人の戸籍を出生までさかのぼって集めていきます。
その過程で取得する戸籍の中には、
・現在の戸籍とは書き方が大きく違う
・手書きの戸籍が出てくる
・戸主という記載がある
・続柄の見方が分かりにくい
といった古い戸籍が出てくることがあります。こうした古い戸籍の中でも、さらに古い時代の戸籍として出てくることがあるのが明治19年式戸籍です。
明治19年式戸籍は、明治19年ごろの戸籍制度のもとで作られた古い戸籍の書式を指す、実務上の呼び方です。現在の戸籍とは制度の考え方が大きく異なります。
現在の戸籍は夫婦と子を単位として作られますが、明治19年式戸籍は、家を単位とする考え方が強く反映された時代の戸籍です。ただし、相続実務では明治31年式戸籍や大正4年式戸籍と比べると、明治19年式戸籍が出てくるケースは多くありません。むしろ、かなり古い世代まで戸籍をたどる場面で出てくることがある戸籍という位置づけです。
なお、古い戸籍の種類全体を先に確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
戸籍の書式とは?平成改製・昭和23年式・大正4年式・明治31年式など
この記事では、
・明治19年式戸籍とは何か
・家制度時代の戸籍の見方
・明治19年式戸籍の特徴
・相続の戸籍収集で出てくるケース
・見分け方と読むときの注意点
を実務の視点で解説します。
相続の戸籍収集にお困りの方へ
相続では、まず被相続人の戸籍を「出生から死亡まで」揃える必要があります。
ただ本当に迷いやすいのは、相続人側の戸籍を「誰の・どこまで」用意すべき範囲が分からないことです。
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明治19年式戸籍とは?戸籍の書式と制度
明治19年式戸籍とは
明治19年式戸籍とは、明治19年ごろの戸籍制度のもとで作られた古い戸籍の書式を指す、実務上の呼び方です。この戸籍は、現在の戸籍のように「夫婦と子」を単位として作る戸籍ではなく、家を単位として把握する考え方が強い戸籍です。
当時は、家を単位とする考え方が戸籍制度や親族制度に強く反映されていました。そのため戸籍も、個人単位ではなく家を単位として管理する性格を持っていました。
この時代の戸籍では、家の中心人物である戸主が置かれ、戸籍に記載される人は戸主との関係で続柄が記載されます。例えば「戸主」「戸主の妻」「戸主の長男」「戸主の母」「戸主の妹」といった形です。
このように、明治19年式戸籍は現在の戸籍とは制度の発想そのものが大きく異なる戸籍といえます。
明治19年式戸籍が作られた時代背景
明治19年式戸籍が作られた時代は、まだ現在の戸籍制度のように統一的で分かりやすい仕組みではありませんでした。現在の戸籍は、「親子関係」「夫婦関係」「出生」「婚姻」「死亡」といった身分関係を公証する制度として整備されています。
これに対して明治19年式戸籍は、それだけではなく、家の構成を把握する役割も強く持っていました。その背景にあるのが、家を単位として家族関係を捉える考え方です。
戸籍では、
・誰が家に入ったのか
・誰が家を出たのか
・誰が戸主になったのか
といった情報が重要になります。
こうした違いが、明治19年式戸籍の書式や記載方法に表れています。
家制度時代の戸籍制度(戸主を中心とした戸籍)
家制度とは何か
明治19年式戸籍が作られていた時代は、家を単位として家族関係を捉える考え方が強い時代でした。ここでいう家制度とは、戸主を中心として家が構成され、家族はその家に属するという考え方です。
この考え方のもとでは、
・戸主が家の中心になる
・家族は戸主の家に所属する
・家族関係は家単位で管理される
・家の承継が重視される
といった特徴が見られます。
そのため戸籍も、現在のような夫婦単位ではなく、家単位で作られていたと考えると分かりやすいです。
戸主とは何か
明治19年式戸籍を読むうえで重要なのが、戸主という概念です。戸主とは、家を単位とする考え方のもとで、その家の中心となる人物です。
現在の戸籍にも筆頭者という概念がありますが、これは戸籍の先頭に記載される人物という意味にすぎません。
一方、家制度時代の戸主は、家の中心として特別な意味を持っていました。
そのため戸籍では、すべての人物が戸主との関係で記載されます。例えば「戸主」「戸主ノ妻」「戸主ノ長男」「戸主ノ母」といった形になります。
古い戸籍を読むときは、まず戸主が誰なのかを確認することが重要です。
家単位の戸籍とはどういうことか
明治19年式戸籍では、戸籍の単位は家です。そのため同じ戸籍の中に「戸主」「戸主の妻」「戸主の子」「戸主の父母」「戸主の兄弟姉妹」などが記載されることがあります。
現在の戸籍では、婚姻などにより親の戸籍から出て新しい戸籍が作られるのが一般的です。
しかし家を単位とする考え方が強かった時代には、現在よりも家とのつながりが強く、戸籍の構成も現在とは大きく違っていました。そのため古い戸籍を見ると、1つの戸籍に複数世代が載っていることも珍しくありません。
家制度の戸籍をもう少し後の時代まで含めて見たい方は、
明治31年式戸籍とは?戸籍の書式と制度・相続で出てくるケース
もあわせて読むとつながりが分かりやすいです。
明治19年式戸籍の特徴
明治19年式戸籍には、現在の戸籍とは異なる特徴があります。主な特徴は次のとおりです。
・戸主を中心とした戸籍
・家単位で作られている戸籍
・手書きで作成された戸籍
・旧字体や古い表現が多い
・記載方法が現在よりも不統一に見えることがある
以下、具体的に見ていきます。
戸主を中心とした戸籍
明治19年式戸籍では、戸主が戸籍の中心人物になります。戸籍上の続柄はすべて戸主との関係で記載されます。
そのため戸籍を見るときは、「誰が戸主か」「その人との関係」を基準に家族関係を理解する必要があります。
現在の戸籍よりも、戸主を起点に読まないと関係をつかみにくい戸籍です。
家単位で作られている戸籍
明治19年式戸籍は、個人単位ではなく家単位で作られています。そのため、「祖父母」「父母」「子」「兄弟姉妹」などが同じ戸籍に記載されることがあります。
現在の戸籍に慣れていると、この構成はかなり分かりにくく感じることがあります。
特に相続実務では、
・誰が直系親族なのか
・誰が傍系親族なのか
・誰が相続人の候補になるのか
を、現在の感覚だけで読むと誤解しやすいです。
手書きで作成された戸籍
明治19年式戸籍は、すべて手書きで作成された戸籍です。そのため取得すると
・文字が読みづらい
・字が崩れている
・記載欄の使い方が現在と違う
といったことがあります。
また、この時代の戸籍は現在のように統一された様式ではないため、現在の戸籍よりも、記載方法や見え方にばらつきが感じられることがあります。ここは明治19年式戸籍の特徴として大きい部分です。
明治31年式以降の古い戸籍以上に、書式や記載のばらつきが出やすいと感じられることがあります。
旧字体や古い表現が多い
明治19年式戸籍では、現在あまり使われない漢字や表記が多く使われています。
例えば「旧字体」「歴史的な地名表記」「現在とは違う続柄表現」などです。
そのため戸籍を読むときは、氏名や本籍地の読み違いに注意する必要があります。
特に相続では、本籍地の読み違いが次の請求先の判断ミスにつながることがあるため注意が必要です。
記載方法が不統一に見えることがある
明治19年式戸籍は、現在の戸籍や、比較的後の時代の古い戸籍と比べても、記載方法が不統一に見えることがあります。
例えば、
・欄の使い方に差がある
・記載の仕方が分かりにくい
・一見しただけでは続柄や異動の意味が取りづらい
といったことがあります。そのため、明治19年式戸籍は、単に「古い戸籍」ではなく、より古い時代の戸籍として読みにくさが強く出やすい戸籍といえます。
明治19年式戸籍の具体例
言葉だけだと分かりにくいので、古い戸籍でよくあるイメージを簡単に示します。
例えば、ある家の戸籍に
・戸主 A
・妻 B
・長男 C
・二男 D
・母 E
が載っていたとします。このあと、
・Aが死亡する
・Cが戸主になる
・Dが分家して別の戸籍に移る
・Cの婚姻や子の出生が記載される
といった動きがあれば、戸籍にはその異動が順に記載されます。
相続実務で重要なのは、こうした異動が親族関係の確認や相続人の漏れ防止につながる情報になることがある点です。例えば、兄弟姉妹相続などで古い世代まで戸籍をたどる場合、
・家を出た人が誰なのか
・その人が後の戸籍でどこにつながるのか
・早く亡くなった人がいたのか
・その人に子がいたのか
まで確認しないと、相続関係を正確に追えないことがあります。
つまり明治19年式戸籍でも、単に家族が並んでいるのではなく、後の相続人確定につながる情報が残っていることがあるという点が重要です。
兄弟姉妹相続そのものの戸籍の追い方は、以下の記事も参考にしてください。
兄弟姉妹が相続人の戸籍はどこまで必要?甥姪(代襲)までの取得範囲
明治19年式戸籍はなぜ相続で重要なのか
相続で重要なのは、単に「古い戸籍がある」という話ではありません。重要なのは、相続人を確定するために、必要な範囲で古い戸籍までたどって確認する必要があるという点です。
相続手続きでは通常、被相続人の出生から死亡までの戸籍をつなげて確認します。なぜそこまで必要かというと、現在戸籍だけでは、「過去の婚姻歴」「前婚の子の有無」「養子縁組」「認知」「早くに死亡した子の存在」などが見えないことがあるからです。
さらに、相続人が兄弟姉妹になるケースでは、被相続人の親の出生から死亡までの戸籍を確認する必要があります。その先でさらに古い世代まで確認が必要になると、明治19年式戸籍が問題になることがあります。
つまり明治19年式戸籍は、実務で頻繁に出る戸籍ではありませんが、相続人の漏れを防ぐために確認が必要になることがある古い戸籍です。
明治19年式戸籍と明治31年式戸籍の違い
明治19年式戸籍のあとには、明治31年式戸籍という戸籍書式が作られました。
これは明治31年(1898年)ごろの戸籍制度のもとで作られた戸籍書式を指す、実務上の呼び方です。
戸籍制度の流れは
明治19年式戸籍→明治31年式戸籍→大正4年式戸籍→昭和23年式戸籍
と整理されることがあります。
明治19年式戸籍と明治31年式戸籍はどちらも家を単位とする考え方が強い時代の戸籍ですが、明治31年式戸籍のほうが後の時代の戸籍であり、実務上はこちらのほうが目にする機会が多いことがあります。
一方、明治19年式戸籍はそれより前の戸籍なので、
・より古い時代の戸籍である
・様式のばらつきが出やすい
・実務で見る頻度はかなり低い
という違いがあります。
なお、明治19年式か明治31年式かを見た目だけで厳密に言い切りにくい場面もあるため、実務では書式名そのものより、前後の戸籍とどうつなげて読むかのほうが重要になることもあります。
より後の時代の家制度戸籍については、
明治31年式戸籍とは?戸籍の書式と制度・相続で出てくるケース
大正4年式戸籍とは?戸籍の書式と家制度時代の戸籍の特徴
もセットでご覧ください。
相続の戸籍収集で明治19年式戸籍が出てくるケース
相続では、被相続人の戸籍を出生までさかのぼって収集します。ただし、被相続人本人の戸籍として明治19年式戸籍が出てくるケースは多くありません。
実務で明治19年式戸籍が出てくるのは、
・非常に古い世代の戸籍を確認する場合
・親世代よりさらに上の世代の戸籍を調べる場合
・兄弟姉妹相続などで戸籍を深くさかのぼる場合
・相続人の漏れがないか、より古い戸籍まで確認する必要がある場合
などです。
つまり、明治19年式戸籍は相続実務でもかなり古い戸籍を調査する場面で出てくることがある戸籍といえます。頻繁に出る戸籍ではありませんが、出てきた場合は人物関係の確認に重要になることがあります。
明治19年式戸籍の見分け方
明治19年式戸籍を見分けるポイントは次のとおりです。
・古い紙の戸籍である
・全体が手書きである
・戸主欄がある
・現在の戸籍とは書式が大きく違う
・欄の使い方や記載方法にばらつきが見られることがある
ただし実務では、明治19年式戸籍と明治31年式戸籍を見た目だけで厳密に区別することが難しい場合もあります。そのため、書式名にこだわるよりも、家制度時代のかなり古い戸籍としてどう読むかを意識するほうが実務では重要になることもあります。
明治19年式戸籍を読むときの注意点
明治19年式戸籍は、取得できても簡単に読めるとは限りません。
注意したいのは次の点です。
・最初に戸主が誰かを確認する
・続柄は戸主基準で読む
・婚姻や分家の記載を確認する
・前後の戸籍とつなげて読む
・旧字体や古い地名表記に注意する
・様式や記載のばらつきを前提に読む
特に実務で詰まりやすいのは、次のような場面です。
・同じ人物でも前後の戸籍で表記が微妙に違う
・古い地名表記のため請求先の判断に迷う
・分家や婚姻で戸籍を移ったあと、どこに続くのか追いにくい
・欄の使い方が一定でなく、異動の意味が取りづらい
そのため、古い戸籍は1通だけで判断すると誤読しやすいです。
明治19年式戸籍では特に、書式名を当てることより、前後の戸籍とつなげて人物関係を追うことが大切です。
戸籍収集にお困りの方へ
相続では、被相続人の戸籍を出生から死亡までそろえる必要があります。
また、兄弟姉妹相続などでは、親の出生から死亡までの戸籍が必要になり、その先の古い世代まで確認が必要になることもあります。しかし、実際には
・改製原戸籍が複数続く
・転籍が多い
・本籍地が分からない
・古い戸籍が読みにくい
・どこまで取れば足りるのか分からない
といったケースが多くあります。特に明治19年式戸籍のような古い戸籍が出てくると、
・戸籍の読み取りが難しい
・戸籍のつながりを追うのに時間がかかる
・相続人の漏れがないか不安になる
といったことがあります。
とくに、兄弟姉妹相続で親より上の世代までたどる必要が出ると、どこまで戸籍を取れば足りるのか分からなくなって止まりやすいです。
戸籍取り寄せ代行センター(行政書士)では、相続に必要な戸籍収集を全国対応で代行しています。
基本料金は19,800円です(料金は相続人の人数で変わりますが、戸籍の通数では変わりません)
よくある質問
明治19年式戸籍は今でも取得できますか?
保存されているものは取得できることがあります。
ただし、非常に古い戸籍のため、保存状況によっては取得できない場合もあります。
明治19年式戸籍は相続でよく出てきますか?
実務上、頻繁に出てくる戸籍ではありません。
明治31年式戸籍や大正4年式戸籍よりさらに古いため、かなり古い世代まで戸籍をたどる場面で出てくることがあります。
明治19年式戸籍と明治31年式戸籍の違いは何ですか?
どちらも家を単位とする考え方が強い時代の戸籍ですが、明治19年式戸籍のほうがより古く、様式や記載のばらつきが出やすいと感じられることがあります。
実務で目にする機会は、明治31年式戸籍のほうが多いことがあります。
明治19年式戸籍が読めない場合はどうすればいいですか?
1通だけで判断せず、前後の戸籍と見比べながら確認することが大切です。
戸主、続柄、異動の記載、本籍地の変遷を順番に追うと読みやすくなります。古い戸籍の判読や請求先の判断が難しい場合は、専門家に相談したほうが早いこともあります。
まとめ
明治19年式戸籍とは、明治19年ごろの戸籍制度のもとで作られた古い戸籍の書式を指す、実務上の呼び方です。
この時代の戸籍は、現在のような夫婦と子を単位とする戸籍ではなく、家を単位とする考え方が強く反映された戸籍でした。そのため戸主を中心に家族関係が記載され、現在の戸籍とは構造も読み方も大きく異なります。
相続の戸籍収集では、明治19年式戸籍が出てくるケースは多くありません。ただし、
・非常に古い世代の戸籍を確認する
・兄弟姉妹相続で戸籍を深くさかのぼる
・相続人の漏れがないか古い戸籍まで確認する
といった場面では、明治19年式戸籍が問題になることがあります。
古い戸籍は読みにくいこともありますが、前後の戸籍とつなげて確認することで家族関係を把握しやすくなります。書式名だけにとらわれず、人物関係と戸籍のつながりを追っていくことが大切です。
相続の戸籍まわりの全体像は
▶相続の戸籍の集め方と必要書類|解説記事一覧
にまとめています。他のケースや手続きも含めて確認したい方は、あわせてご覧ください。
